byakusyn(@byakusyn)です。
コンプで有名なものといえばいくつかありますが、特に有名なものといえば、1176シリーズ。
私もUniversal Audio純正のプラグインを愛用しています。
今回はその特徴とリビジョン、使用方法などをまとめました。
1176の特徴
1967年に米Universal Audioが発売した、FETタイプのコンプレッサー/リミッターです。
発売以後50年以上、現在でも多くのスタジオで使われ続けていて、モデリングプラグインも多数リリースされている名機中の名機と言われています。
FETタイプ特有のアタックの速さもさることながら、単なるコンプにとどまらず、音楽的な色付けが1176の特徴です。
リダクション量によってその程度は変わりますが、ミドルからミドルハイ辺りが少し張り出し、良い意味で若干歪みます。その歪みが音楽的で好まれます。
表面のパネルにLimitting Amplifierとある通り、単なるコンプレッサー/リミッターを超えて、一種のアンプと捉えるような使用方法もあります。
リビジョン
1176には多数のリビジョンがありますが、リイシューを除いて大きく分けると、以下に分けられます。
- ブルーストライプ
- ブラックパネル
- シルバーパネル
- リミテッドモデル
この内、よくプラグイン化されるのはブラックパネル、次点でブルーストライプです。また、Universal Audio純正のプラグインだと、リミテッドモデルのものがあります。
ブルーストライプ
Rev.A/AB/Bのもので、シルバーの筐体にメータ辺りにブルーが入ったモデル。なのでブルーストライプ。
倍音が豊富で、他のリビジョンに比べると比較的色付けが濃い音色。
ブラックパネル
Rev.C~Gのもので、特にC~Eの評価が高いようです。ブルーストライプよりいくらか上品な感じ。
ノイズを低減する仕組みが導入され、モデル名にLN(Low Noise)が付与されています。
シルバーパネル
Rev.H以降。シルバーパネルのプラグインは触ったことがないですが、実機の傾向としては一番落ち着いている音色らしいです。
リミテッドモデル
Rev.Aの応答特性にRev.EのLN機構を組み合わせた、Rev.AEというものがあります。
このモデルは、レシオ2:1があったり、スローなアタックが設定できたりと、機能面でも他に無い特徴を持っています。
Universal Audio 1176のコントロール
私が愛用しているUniversal Audio 1176 Rev.Aを元に。
他のメーカーでもだいたい同じだと思います。ハードウェアのエミュレートだしね。
- インプットゲイン
- アウトプットゲイン
- アタック
- リリース
- レシオ(ボタン式)
- メーター
- メーターの設定ボタン
スレッショルドのコントロールがない
スレッショルドは固定です。
その代わりインプットゲインのコントロールがあり、これを上げるとレベルが上がり、同時に圧縮がかかっていきます。上がりすぎた分はアウトプットゲインで下げます。
音量が小さいソースの場合、インプットゲインをフルテンにしてもスレッショルドまでレベルが上がらず、圧縮がかからない場合があります。
そのようなソースの場合は、前段でレベルを調整する必要があります。
アタックとリリースのコントロールは普通の感覚と逆
最初はしっくりこないポイントだと思います。
通常、左に回しきると最速、右に回しきると最遅になるのが普通ですが、1176は逆で、左に回しきると最遅、右に回しきると最速になります。
なんでこういう仕様にしたのかは謎ですが、慣れればなんていうことないです。音の変化で分かるし。
ちなみに、ノブには具体的な速度は記載されていませんが、1176のアタックタイムは0.02ms~0.80ms、リリースタイムは50ms~1.1sのようです。
セッティング
通常のコンプとしての設定は、あくまでコンプなのでソースによる、としか言えないですが、わかりやすい例として以下の動画が参考になるかと。
私がよくやる使い方は、以下のような感じです。
ギター
音作りの一環のイメージで使うことが多いです。
リズムギターにはRev.A、クリーンギターにはRev.E、リードギターにはRev.AEを使うことが多いです。
ゲインリダクションはどれも控えめで、-1~-3程度です。
ドラム
キックにRev.A、スネアにもRev.Aをパラレルでかけることが多いです。
ゲインリダクションはキックは-3db、スネアは-3db~-5dbくらい。パラレルコンプなので他よりちょっと強め。
ボーカルにかけるのが定番ですが、インストなのでね。
で、1176には定番のセッティングがいくつかあります。
ドクターペッパー
これは、アタックを10時、リリースを2時、レシオを4:1に設定するもので、とりあえずソースを選ばないオールマイティな設定です。
この名前は、毎日10時、2時、4時にドクターペッパーを飲んで糖分補給を促す、という昔の広告に由来しているそうです。
アメリカの広告なのかな。実際に見たことはないですが。
ブリティッシュモード
レシオボタンを全押しするセッティングです。有名な使い方ですね。コンプと言うより音作りとして使用されます。
60年代から70年代のUKでよく使用されたので、ブリティッシュモードというらしいです。年代としてはLed Zeppelin辺りですかね。
どうなるかと言うと、ぐぐっと歪みます。オーバードライブくらい。
椎名林檎の「本能」の冒頭のvoが、このセッティングを使用していると言われています。
こういった、半ばエラーのような使用方法で音がかっこよくなる辺り、往年のアナログ機材の面白いところですね。
しかしメーターの針がビンビンに暴れまくるので、高価な実機で最初にやった人は、勇気ある人だったか富豪かこまけぇことはいいんだよ!なノリの人かのどれかだったと思います。
カラー
レシオを全てオフにするセッティングで、コンプとして使用せずサチュレーターのような使い方をします。
プラグイン
Universal Audio 1176 Classic Limitter Collection
本家。これ買っておけば間違い無しですが、UADハードウェアが必要となるため、持っていない人には敷居が高いですね。Rev.A、E、AEのセット。
WAVES CLA-76
クリス・ロード・アルジ氏が所有している1176をモデリングしたプラグイン。Rev.AとEのセット。
Black Rooster Audio VLA-FET
Rev.Fのモデリングらしいです。
IK Multimedia BLACK 76 Limitting Amplifier
Rev.Eのモデリング。
Purple Audio MC77
Rev.Eのモデリング。Plugin Allianceから。
Pulsar Audio Smasher
他にも色々あると思いますが、Universal Audioしか使ったことがないので、紹介はこの辺まで。
あとがき
1176の魅力はやはり音色。特有の軽い歪み感はロックによく合います。
速いアタックで問題なければソースを問わずに使えるので、様々な場面で活用できると思います。
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byakusyn