byakusyn(@byakusyn)です。
ミキシングにおけるコンプで最も有名なものといえば、まず思いつくのが前に記事にした1176シリーズ。
今回は1176に並んで有名な、Teletronix LA-2Aについて、特徴と使用方法などをまとめました。
LA-2Aの特徴
1962年に米Teletronix社が開発した、光学式コンプレッサーです。コンプレッサーと表現しますが、商品名はLeveling Amplifierです。
光学式といえばまずこれとも言えるほど有名な機種で、現在でも評価の高い名機ですね。
元々は放送局用として収録現場などで使用されていましたが、評価が高まるにつれて音楽業界でも使われ始めた、という歴史があるようです。
なおTeletronix社は企業買収を経て、最終的には1176を開発したUniversal Audio社に買収されています。そのため現行の実機には、Universal Audio社とTeletronix社の両ロゴが刻印されています。
光学式コンプはOptコンプとも呼ばれ、白熱電球や発光ダイオードなどの光源の発光量を入力信号によって変化させ、その発光をフォトセルと呼ばれる入射する光量で電気抵抗が変化する電子部品で検知することでゲインリダクションを行います。
光源を発光→それを受光してゲインリダクション処理という工程を行うため、FETコンプなどと比較すると、アタックとリリースが遅めであり自然なコンプ感が得られます。
これが光学式の特徴といえるところで1176とは違う魅力を持っており、ドラムなどアタックが強いソースには向かない反面、ボーカルやホーン、ストリングスなどレガートのフレーズが多いパートに適しています。アコギにかけることもあるようですね。
また実機ではゲイン段などのアンプ回路には真空管を使用しているため、真空管特有の風味もあるとのこと。
私の場合、ロングトーンやトレモロリフが多いリードギターにほぼ毎回使用しています。
パネルによる違い
私が愛用している、Universal Audio Teletronix LA-2A Classic Leveler Collectionには、3つのLA-2(A)が入っています。通称オリジナル、グレー、シルバーです。
色味が似ているのでちょっと見分けがつきづらいんですけどね。
オリジナル
オリジナルはその名の通りオリジナルLA-2のモデリングで、この3つの中でアタックとリリースが一番長いです。最も光学式コンプらしいコンプと言えます。
正確にはLA-2Aではなく前身のLA-2のモデリングであるため、パネルのデザインやLIMIT/COMPの切り替えスイッチ、VUメータのモードを切り替えるノブが無いなどの相違点があります。
グレー
オリジナルの味付けが少し薄味になったような感触。実際にオリジナルとシルバーの間、しかもだいぶシルバーよりのアタックとリリースになっています。
シルバー
一番新しいモデルで、アタックとリリースが比較的早いモデル。アタックの強いソースでも自然なコンプ感が欲しい場合などに適しています。
比較
同じサンプルに対してそれぞれをインサートし、おおよそ-5dbほどリダクションする設定にしたところをgifにしてみました。上からオリジナル、グレー、シルバーです。
サンプルはベース1弦ハイフレットのロングトーンです。
ちゃんとメータリングしていないので、大体の目安として見てください。
オリジナルがアタック・リリースともに遅く、ついでグレーとシルバー、その両者は特性がだいぶ近いです。特徴が出ていると思います。
ピークリダクションノブの位置はまちまちですが、特に困ることは無いと思います。
Universal Audio Teletronix LA-2Aのコントロール
グレーを元に。
- LIMIT/COMP切替スイッチ
- エンファシス
- ゲイン
- VUメーター
- ピークリダクション
- メーターノブ
- パワースイッチ
スレッショルド・レシオ・アタック・リリースのコントロールがない
実際のところ、ピークリダクションノブがスレッショルド、LIMIT/COMP切替スイッチがレシオの働きをします。
他のコントロールは固定になっていて、公称値はアタックは平均10msec、リリースはリリース半分で平均60msec、その後は1~15秒とのことです。レシオはLIMITで∞:1、COMPで3:1のようです。
そのため使い方としては、LIMIT/COMP切替スイッチでレシオを設定した後、VUメータでゲインリダクション量を見ながらピークリダクションノブでスレッショルドを設定し、ゲインノブでメイクアップゲインを設定する、という流れになります。
なおピークリダクションノブはリダクション量を決めるコントロール、という役割であることから、右に回すとスレッショルドが下がり、左に回すとスレッショルドが上がります。またノブのメモリに書かれているリダクション量が得られるわけではなく、ノブの位置表示くらいの認識でよいです。
その他のコントロール
エンファシスは簡単に言うと内部サイドチェインで、右に回しきると全帯域に対してゲインリダクションし、左に回すにつれて低域成分にコンプが反応しなくなっていきます。非公式な情報ですが、内部サイドチェイン信号のカットオフ周波数は1KHzらしいです。
メーターノブはVUメーターの表示モードを切り替えるノブです。OUTPUT +4及びOUTPUT +10にすると出力レベルを表示します。
放送で使うのであれば別ですが、ミックスで使うのでGAIN REDUCTIONの位置でよいと思います。
セッティング
代理店のHOOKUPのサイトによいサンプルがありますので参考に。
私の場合は以下のような感じです。
リードギター
どのパネルのモデルを使うかは曲次第ですね。太めロングトーンを綺麗に響かせたいときはオリジナルが多いです。リアPUでトレモロするときはその曲次第でグレーやシルバーを使用する、といった感じです。
リダクション量は段掛けするので-2~-4dbくらいです。もう少しリダクションしても問題無いと思っています。
プラグイン
Universal Audio Teletronix LA-2A Classic Leveler Collection
本家。当然ながら再現度が最も高いと言われています。実機触ったこと無いけど。
これを買っておけば間違いなしですが、UADハードウェアが必要です。
オリジナル、グレー、シルバーのセット。
WAVES CLA-2A
クリス・ロード・アルジ氏所有のLA-2Aをモデリングしたプラグイン。
LIMIT/COMPスイッチがあり、エンファシスの代わりにHiFREQノブがあるのとパネル色から、シルバーのモデリングと思われます。
IK Multimedia White 2A Leveling Amplifier
IK Multimediaの人気マスタリングスイート、T-RackSの1つという位置付けでラインナップされています。
Black Rooster Audio VLA-2A
実はBlack Rooster Audioのプラグインは1つ持っていないのでコメントしづらいですが、抜かりなくラインナップしています。
Brainworx bx_opto
Brainworxでもリリースしています。
モデリングではあるものの大きく機能追加がなされており、20Hz~20KHzでのローパス・ハイパス・バンドパスを選べるサイドチェイン、Mixノブによるパラレルコンプの実現、スピードノブによるアタック・リリースの設定が可能です。
特にスピードノブによりオリジナル、グレー、シルバー、そしてそれぞれの中間を設定できる、よりフレキシブルなプラグインになっています。
他にもあると思いますがこの辺で。実はUADしか使ったことがないですが、bx_optoの自由度は魅力ですね。
あとがき
LA-2Aの魅力は自然なコンプ感ですね。私の曲はインストのメタル系なので、どうしても主役は1176になるのですが、ロングトーンのリードギターをボーカルの立ち位置に据えるアレンジが多いので、そういう場面で活用しています。
一方で歌ものやホーンセクション、ストリングスを入れるアレンジをする人は、一つ優秀な光学式コンプを持っていると、ミックスに有効な道具になると思います。
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byakusyn