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複数トラックを一つの画面で一度に可視化するアナライザ(MeldaProduction MMultiAnalyzer)

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byakusyn(@byakusyn)です。

 

ミックスを行う上で、被っている帯域を特定したり出すぎている帯域を把握するために欠かせないアナライザ。

有名どころだと、Waves PAZ AnalyzerやiZotopeのINSIGHT、フリーでもVoxengo SPANなどがあり、そもそもDAWに付属していることも多いです。

しかし、どれもアナライザを挿したトラックの波形を表示するもの。

EQポイントを探すために、比較したいトラックにアナライザを挿して2つの画面で波形を比較していると、複数のトラックを1つの画面のアナライザで重ねて表示したい、と思うのは自然な欲求だと思います。

 

で、そういうことができるマルチアナライザについてです。

 

 

マルチアナライザとは

通常のアナライザは挿したトラックの波形のみを表示します。

マルチアナライザはその名の通り、複数のトラックの波形を一度に表示することが可能です。

これにより、比較したいトラックが1つの画面に表示されるので、ミックスの大きな手助けになります。

 

MeldaProduction MMultiAnalyzer

あまり日本では有名でない?けど玄人好みで有用なプラグインを多数リリースしているMeldaProduction。チェコのベンダです。

マルチアナライザとして、MMultiAnalyzerをリリースしています。

 

アナライザの表示

MMultiAnalyzerはこんなイメージで波形を表示します。

複数のトラックの波形を一度に表示しています。 f:id:byakusyn:20210508222904p:plain

 

各トラックには、トラックの名前と色を指定できます。

名前はMMultiAnalyzer上の名前であり、実際のトラック名とは別に付けられます。

色は自分の場合、ドラムは緑系、ギターは青系、ベースは赤系と決めていて、アナライザ上でもそのように色付けしています。

それぞれのトラックは、アナライザ上での表示・非表示をクリックひとつで切り替えることができます。

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これで、例えばバスドラとベースだけを表示、もしくはギターとシンバル、もしくはスネアを表示してピークをずらす帯域を見極める、といった使い方ができます。

 

アナライザの使い方

アナライザ上で表示したいトラック全てに、MMultiAnalyzerのプラグインを挿すだけです。

表示するだけであれば、サイドチェインなどの他の設定作業も何も必要ありません。この手軽さが良いですね。

CPU負荷も軽いため、気にせずどんどん挿せます。

 

各種モード

MMultiAnalyzerには多数の表示モードがあります。

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SPECTRUM

上記で紹介したモードで、一般的なスペクトラムアナライザです。

基本的なことは上述の通り。

このモード、AREA表示という機能があって、例えばトラムのパーツであればこの太鼓がこの辺、というテンプレートを表示できます。

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これの特に良いところは、自分のテンプレートをプリセットとして作成できること。

よく○○Hzはバスドラの鳴りで、○○Hzはスネアのアタックで~といった解説があります。

ある程度のガイドとして使う分には問題ないですが、同じ楽器でもジャンルによって周波数帯は異なります。

そんな中で、例えば自分のジャンルに近いリファレンス音源を再生してプリセットを作成し、それに合わせて自分の曲をミックスすることで、よりリファレンス音源のミックスに近づけることができます。

 

SONOGRAM

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音を色で表示するモード。

縦軸が時間、横軸が周波数で、色の濃さがその時間・周波数帯での音量レベルを示します。

自分はあまり使いませんが、倍音チェックに使えると思います。

 

COLLISIONS

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ぶつかっている帯域を表示するモード。横軸が周波数です。

一番下の赤い帯が音の衝突を示すインジケータで、検知すると赤くなります。

画像は2mixを表示しているためインジケータが真っ赤になり意味のないものになっていますが、バスドラとベースとか、ギターとスネアとか、被りやすいパートだけをソロにして使います。

ちなみに、衝突自体が悪いことではないです。

音を重ねれば重ねるほど自然に発生するので、何かしらミックスに問題を感じた場合、不要な衝突の発生を確認するような用途で使うと良いと思います。

 

LOUDNESS & WAVE

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各トラックのラウドネスを波形で表示するモード。縦軸がラウドネス(LU)、横軸が時間です。

これは2mix向けで、ラウドネスの意味合いで飛び抜けて大きな音を探すことができるので、コンプで叩くべきトラックとタイミングがわかります。

 

STEREO

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各トラックがL-Rのどこで鳴っているかを表示するモード。縦軸が%で横軸がL-Rです。

全体のバランスと、モノラルであるべきものがちゃんとモノラルで鳴っているかをチェックできます。

 

OSCILLOSCOPE

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トラックの位相を表示します。

逆相チェックに使いますが、同じMeldaProductionのMAutoAlignで自動的に処理しているので、ほとんど使用していないですね。。

 

MMultiAnalyzerのコントロール

各モードの共通のコントロールです。

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  1. 指定した時間の平均値を表示する
  2. 波形の滑らかさ
  3. 縦軸の解像度
  4. ゲイン
  5. よくわからん
  6. ディケイ
  7. 高周波の除去 

好みによってディケイを調整する程度で、ほぼデフォルトで問題ないと思います。

ちなみにマニュアルのリンク。トップから辿れなかったので参考まで。

https://www.meldaproduction.com/download/documentation/MMultiAnalyzer.pdf

 

セール

MeldaProductionの公式サイトで、いくつかのプラグインを50%ディスカウントするセールを10日替わりで行っていますので、まめにチェックすると良いです。

定価で$69。定価の時点で、機能性から考えると非常に安いです。

www.meldaproduction.com

 

あとがき

耳だけで判断できるのが一番良い、といった言葉を聞きますけど、便利なツールがあるなら使えば良いと思うので活用しています。

ミックスの心強いガイドになること間違いないです。

見方に慣れるのに少し時間がかかりますが、分かれば難しいことはないと思います。

 

難点は、MeldaProductionのプラグイン全体に言えることですが、コントロールや設定が多く細かいためとっつきづらいこと。

このベンダは最近流行りのチートプラグインとは真逆の考え方を持っていて、そのプラグイン例えばコンプであればコンプでできることに対して詳細なパラメータを用意しています。

その分使いこなすのが難しく、目的意識とパラメータの作用を把握した上でないと扱いづらい、いわば玄人向けですね。

今回紹介したのはアナライザなのでエフェクトではないですが、愛用しているマルチバンドコンプ、MDynamicsMB辺りはかなり詳細な設定が可能です。

 

とはいえ基本は一緒なので、ある程度分かっていれば慣れの範疇と思うので、それこそ最初はMMultiAnalyzerから触ってみるのが良いと思います。

 

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